「21グラム、6本入り」では2ケースだった。お客様目線に変えたら5ケースになった

正直に言います。日本ハムで営業をしていた頃の私は、できる営業マンではありませんでした。

運転も上手ではない。ミスもする。目標に届かない月もある。商品知識を覚え、教えられた通りに説明しているのに、なぜか売れない。そんな時期がありました。

あるウインナーを提案するとき、私は「21グラム、6本入りで、肉汁がジューシーです」と説明していました。商品説明としては正しい。嘘は一つもありません。

店長から返ってきたのは、価格の確認でした。そして、注文は2ケース。買ってもらえたのだから失敗ではない。けれど、手応えはありませんでした。

商品を説明するほど、店長の仕事から離れていた

私は商品の中身ばかり見ていました。重さ、本数、食感。ところが、店長が考えていたのは別のことです。売り場で手に取られるか。在庫が動くか。店の売上につながるか。

そこで、伝える順番を変えました。子どもに人気があること。家族の食卓を考える人が手に取りやすいこと。その結果、売り場の動きにつながること。商品ではなく、店長の仕事から話し始めました。

次の提案では、店長の反応が変わりました。マスク越しでも、目が変わったのが分かった。注文は5ケースになりました。

商品は、何も変わっていません。変わったのは、相手に見せた未来だけでした。

「すごい」と「欲しい」は、別の感情です

「21グラム、6本入り」では2ケースだった。お客様目線に変えたら5ケースになった

21グラム、6本入り、肉汁がジューシー。これを聞けば、「良さそうですね」とは思ってもらえます。しかし、「この店に置きたい」と判断するには、自分の仕事とのつながりが必要です。

製造業でも同じです。公差±0.01mm。5軸加工機。24時間稼働。ISO9001。どれも大切な事実です。ただ、それだけでは、お客様は自社の案件に必要かどうかを決められません。

  • 公差±0.01mmだから、組付け後の再調整を減らせる
  • 工程設計によっては、5軸加工で段取り替えを減らし、位置ずれの要因を抑えられる
  • 24時間稼働に加えて材料・人員・工程に余力があれば、急な増産を相談できる可能性がある
  • 製造履歴を追えるから、不具合時に対象範囲を絞りやすい

スペックを消しているわけではありません。未来を先に置き、スペックをその根拠にしています。

私が言う「お客様目線」

お客様目線とは、お客様の言うことを何でも聞くことではありません。専門用語を全部やさしくすることでもありません。

その技術を採用した後、お客様の仕事と会社がどう変わるか。相手が判断できる言葉で、そこまで先回りして伝えることです。

現場では、多くの会社が既にやっています。図面どおりに作ると割れそうなら、先に伝える。納期が危ないなら、聞かれる前に相談する。お客様のために、次に起きることを想像して動いています。

ところがホームページを書くと、お客様の顔が見えなくなり、設備名と会社沿革だけに戻ってしまう。現場でできていることを、文章でもやればいいのです。

御社の「21グラム、6本入り」は何でしょうか

ページに並んでいる数字や設備名を、一つ選んでください。その直後に、こう問いかけます。

「だから、お客様の仕事はどう変わるのか?」

答えがすぐ出なければ、最近喜ばれた案件を営業へ聞いてください。お客様は何に困っていたのか。御社は何を変えたのか。導入後、相手の仕事はどうなったのか。

商品を変えなくても、伝わり方は変えられます。私は、商品の価値を伝えきれなかった頃の自分から、そのことを教わりました。