繁忙期の帰り道、「俺の人生はこのままでいいのか」を書いた採用メール

求人に「やりがいがあります」と書いても、疲れ切った人の心には届きません。

ある税理士法人の採用で、狙っていたのは経験者でした。私は、忙しい時期を何度も越え、仕事はできる。でも帰り道に缶コーヒーを持ちながら「俺の人生はこのままでいいのか」と考える人の姿を想像しました。

※社名や個人を特定する情報は伏せています。

その気持ちを、きれいな採用コピーへ丸めませんでした。繁忙期が終わるたびに感じる迷いを、そのままメールの入口に置きました。結果は、一通のメールから3人の応募でした。

待遇の前に、「これは自分の話だ」と感じてもらう

繁忙期の帰り道、「俺の人生はこのままでいいのか」を書いた採用メール

給与、休日、福利厚生は大切です。ただ、条件表だけを見て転職を決める人ばかりではありません。今の仕事で何に疲れ、何を変えたいのか。本人も言葉にできていない感情があります。

採用で人間味を出すとは、社員の笑顔写真を増やすことだけではありません。相手が一人で抱えている本音を、会社側が先に言葉にすることです。

製造業の採用なら、どんな帰り道があるか

  • 毎日同じ段取りだけを続け、技術が伸びている実感がない
  • ベテランの勘を見て覚えろと言われ、質問できない
  • 交代勤務や残業を、家族へ説明しにくい
  • 不具合を一人で抱え、相談相手がいない
  • 経験を持っているのに、次世代へ渡す役割がない

全部を一つの求人に入れる必要はありません。採りたい職種と経験に合わせ、最も大きな迷いを一つ選びます。

共感だけで終わらせない

「あなたの気持ちは分かります」と言うだけでは、優しい広告で終わります。その会社へ入ると何が変わるのかを、仕事と制度で裏づけます。

  • 最初の一か月に任せる仕事と、教育担当者
  • 質問や改善提案を出せる場と頻度
  • 残業・休日・交代勤務の実態
  • 一人立ちの目安と、評価される行動
  • 三年後に任せたい役割

良い面だけでなく、大変な場面も書きます。その負担に対して、会社がどんな支援を用意しているかをセットで示します。

採用では、主役を求職者へ置き換える

製品の発信でいうお客様目線と、原理は同じです。会社が語りたい魅力より、相手が次の生活を判断できる情報を先にします。

求人を書く前に、最近入社した社員へ聞いてください。「応募前、いちばん不安だったことは何ですか」。その答えは、次に同じ帰り道を歩く人へ届きます。